成功の方法を教えてくれる人々
成功の方法を教えてくれる本がある。本屋に行けば必ずと言っていいほど、成功者の写真と決め台詞で飾られた本が店頭に置かれている。
そういった本の著者は、本だけでなく自分の講演会も行っていることが多い。本に書いた内容を口に出して述べることでより理解してもらえる。ついでに本の宣伝にもなり、いいことづくめである。
これらの本や講演会では、成功の方法が自信を持って語られる。章立てをしたり、パワーポイントを見せたり、誰にでもわかりやすくポイントを教えてくれる。その自信にみなぎる顔を見ると、見ている側も知らず知らずのうちに自信が沸いてくるかもしれない。
そのみなぎる自信のわけは、彼らが成功者であるから、ということに加え、もう一つ理由がある。
それは、その口が語る「成功の方法」が、すでに賞味期限切れであることを知っているからである。
彼らはその道で先陣を切り、一定の成功を収めている。その道はすでに、彼らによって踏み荒らされており、新たに見出すものはほとんどない。
彼らが何故親切に教えてくれるかというと、彼らの語る方法ではもはや上に行けない、その方法に従っても彼らを越えることはできない、ということを知っているからである。
自分を越える恐れのある者に対しては警戒するのが人情だが、越える恐れのない者に対しては気兼ねなく接することができる。
彼らは頭打ちの理論を何度も教えてくれる。その言葉を信じる者は、何度も天井に頭を打ち付ける。
使い古された言葉ではあるが、何かの道で成功を収めようと思うのなら、その道は自分で見出すしかない。
他人の示す道を疑いもなく歩く者は、何となく目的地に進んでいるような気になっているだけであり、結局は他人が踏みならした殺風景な景色を見るだけで終わるのである。