一匹ずつ現れるゴキブリ
ふとゴキブリのことを考えてみると、奴らの生態には不思議な点があることに気づく。
家の中で奴らが現れる時、必ずと言っていいほど一匹ずつ現れる。
一匹のゴキブリがいれば他に何匹も潜んでいるというけれど、リアルタイムに目の前に現れるのは、私が経験してきた限りではいつも一匹である。
なぜ奴らは一匹ずつ現れるのか?
奴らにとって人前に出ることはサバイバルであり、命がけの行動である。その舞台はまさに生きるか死ぬかの戦場である。
戦場では皆が一箇所に固まっていると、攻撃を受けたときに全滅の恐れがある。
何匹もいっぺんに出てしまうと、我々に発見される確率が高くなる。
「見つからないよう、一匹ずつ行動しようではないか。」
同士を想う気持ちから、勇ましく一匹ずつ戦場に出て行くのではないだろうか?
友達ゴキブリと親子ゴキブリの2つの場合を考えてみよう。
①友達ゴキブリの場合
頼れる兄貴分ブリと、いつも引っ張られている弟分ブリ。
これまで何度も2匹で修羅場を潜り抜けてきた。
兄貴分ブリがいつも先陣を切り、安全なルートを開拓する。
人目につかない場所への潜入に兄貴分ブリが単身成功すると、振り返って「さあ兄弟、今なら大丈夫だ!早くこっちへ!」と呼びかける。
②親子ゴキブリの場合
母ブリと子ブリはいつも一緒だ。
子ブリがある程度大きくなるまで、母ブリは戦場には近づかないよう、子ブリをいつも隣に置いて大切に育ててきた。
「子ブリや。あんたもそろそろ大人にならんといかんね。」
母ブリは子ブリを戦場のすぐそばまで連れて行く。
「母さん向こう側まで行ってみるからね。よう見とるんよ。何かあっても出てきたらあかんで。」
奴らも案外身内思いなのかもしれない。
一匹ずつ現れる奴らの事情は定かではないが、人生の大先輩である奴らの生態には今後も注目することにしよう。