思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

老師との対話「政治家と裏金」①

若者「老師さま、あなたにお伺いしたいことがあります。何故政治家という連中は、揃いも揃って汚い人間ばかりなんでしょうか?国民の税金を湯水のようにくだらない交際費なんかに使って、私は憎くて仕方ありません。」

老師「どうやら君は政治家に不満を持っているようだね。今日はそれについて話をしようか。」

若者「是非お願いします。」

老師「ところで君は結婚しているんだったね?」

若者「はい、ちょうど1年ほどになります。」

老師「家計をやりくりしているのは、君かね、それとも奥さんかね?」

若者「妻がやりくりしています。」

老師「毎日のお金の出入りについて、君はその詳細を知っているかね?」

若者「いいえ、ほとんど知りません。僕が管理しているのは自分の小遣いくらいで、他のことは全て妻に任せています。」

老師「君が仕事を終えて帰宅した時、奥さんの機嫌が良い日というのが、おそらくあるだろうね?」

若者「ええ。昨日も帰ったら妻の機嫌は良かったです。」

老師「その理由を君は知っているかね?」

若者「知りません。」

老師「そんな風に奥さんの機嫌が良い時というのは、実は君には内緒で美味しいランチを食べたり、おしゃれな喫茶店で贅沢なコーヒーでも飲みながら友達と無駄話をしていたりするものなんだが、君はこれについてどう思うかね?」

若者「僕が必死に働いている時にそんなことをしているなんて!とても許せませんね。」

老師「ところで君が会社で働いている間、奥さんに最もしてほしいこととは、どんなことだね?」

若者「家事をしっかりしてもらうことです。」

老師「奥さんのする家事というのも、一つの立派な仕事だと思うかね?」

若者「もちろんです。」

老師「では話は変わるが、もし君が会社で取り扱う業務の中で、外部の業者に仕事を頼んだ場合、一番重要視することとはなんだね?」

若者「頼んだ仕事を、納期までに完成してもらうことです。」

老師「その納期までの間、君はその業者が時々休憩していたり、無駄話をしていたりしたら、どう思うかね?」

若者「何とも思いません。ただ納期までに完成してもらえればよいだけですから。」

老師「では先程君は、家事も一つの立派な仕事であることに同意したのだったね?」 

若者「そうでした。」

老師「それならば、君が会社で働いている間、君は奥さんに家事という仕事を頼んでいる、ということにならないかね?先程取り上げた、業者に仕事を頼む時のように?」

若者「形としてはそうですね。」

老師「頼んだ仕事を納期までに仕上げてもらえれば、向こうがいつ休憩しようが無駄話をしようが、君は何とも思わないのだったね?」

若者「そうです。」

老師「君の奥さんは、これまで君が会社から帰宅するまでに、家事を終えていないことがあったかね?」

若者「いいえ。掃除も風呂焚きもご飯の用意も、いつも仕上がった状態で僕を迎えてくれます。」

老師「それでは君は、奥さんが昼間に美味しいランチを食べたり、おしゃれな喫茶店で贅沢なコーヒーを飲みながら友達と無駄話をしていたりしても、何の不満も抱くべきではないのではないかね?」

若者「話の流れからいくと、そう考えなくてはならないようですね。」

老師「そしてもしも奥さんが気持ちよく毎日家事をするために、昼間のそういった息抜きが必要であるならば、君としては是非そうしてほしいと願うのではないかね?それらの息抜きがなければ毎日の家事が継続されないとするならば?」

若者「それはそう思います。仕事から帰ってから自分で家事をすることを考えると、昼間の経費なんて安いものです。」

老師「どうやらそのようだね。ではここまで、君の結婚生活に沿って話を進めてきたわけだが、政治家の仕事についても、この話がある程度当てはまるように私には思えるのだ。」

若者「老師さま、ここからが本題というわけですか?もう私も帰らなければならない時間になってしまいましたよ。」

老師「実は先程から、いつ君がそれを切り出してくれるものか、待ちわびていたのだよ。私としてもできるかぎり本題に入るまでに時間稼ぎをして、その間に考えをまとめようとして君にあれこれ質問ばかりしていたのだからね。」

若者「老師さまはいつも僕に質問ばかりして、自分の考えというものは最後に添えるだけですからね。それを承知で今日もお尋ねしたのです。それでは明日、またこの場所でお会いしましょう。僕も早く帰らないと怒られてしまいます。」

老師「それはいけないね。結婚して1年やそこらで喧嘩ばかりではこの先大変だからね。それでは明日、私が忘れていなければまたここで会うことにしよう。」