思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

老師との対話「政治家と裏金」②

若者「こんばんは、老師さま。今日も来てくださったのですね。どうか昨日の話の続きを聞かせてください。」

老師「危うく度忘れしてしまうところだったよ。さて、それでは早速始めようか。君の帰りが遅くなって奥さんに怒られないようにね。」

若者「よろしくお願いします。」

老師「昨日、君の結婚生活を引き合いに出して、これから本題に入ろうというところで終わったと思うが、君は昨日の話を覚えているかね?」

若者「はい。僕の妻がしてくれている家事も一つの立派な仕事であり、その仕事がしっかり果たされている限りにおいて、妻が昼間にどこで休んだり無駄話をしていようとも僕は不満は抱かないはずだ、ということだったと思います。」

老師「ありがとう。実は君に要約を話してもらうことで、昨日自分が話した内容を思い出そうとしたのだよ。歳をとると自分の言ったこともあやふやになってしまってね。」

若者「私の記憶力でよければいくらでもお使いください。」

老師「さて、確か君は、お金のやりくりはほぼ全て奥さんに任せているのだったね?」

若者「はい。」

老師「なぜ君は、自分が稼いだお金を奥さんに預けることができるのかね?」

若者「毎日節約のことなどを考えている姿を見て、妻ならうまくお金をやりくりしてくれるはずだと、信頼しているからです。」

老師「なるほど。それでは本題である政治の話にも入っていこう。さて、君は選挙が行われるとき、ちゃんと投票をしているかね?」

若者「もちろんです。国政に参加するのは国民の義務ですからね。」

老師「君が投票する政治家とは、どんな人物かね?」

若者「この人なら国民のことを考えた政治をしてくれるだろう、と思える人です。」

老師「それはつまり、その政治家のことを信頼しているということだね?君が奥さんを信頼しているように?」

若者「妻ほどではないですが、その人のことを信頼して投票しますね。」

老師「君はその政治家に、政治のやりくりを任せるというわけだね?君が奥さんにお金のやりくりを任せるように?」

若者「政治家に対しては、政治のことを任せることになります。」

老師「政治も一つの立派な仕事だね?」

若者「もちろんです。」

老師「君は、奥さんが家事という仕事をしっかり果たしてくれるなら、どんなに休んだり、どこで無駄話をしていても、文句を言わないはずだったね?」

若者「昨日の話ではそこに行き着きました。」

老師「では君は、政治家が政治という仕事をしっかり果たしてくれるなら、その政治家がどんなに休んだり、どこで無駄話をしていても、文句を言わないはずなのではないかね?」

若者「そういうことになりますね。ただし、その仕事がしっかり果たされていると判断できる限りにおいて、ですが。」

老師「では聞くが、君が持っている政治に関する知識と、政治家が持っている政治に関する知識を比較してみて、どちらの知識がより深く、確かなものだと思うかね?」

若者「それはもちろん政治家の持つ知識でしょう。僕はただの会社員ですし、政党に入ったこともないのですからね。学校で勉強したことや、新聞やテレビである程度は政治のことを知ってはいますが。」

老師「ところで、ある事柄についての知識に乏しい者は、その乏しい知識によってしか対象の事柄について考えを巡らすことができずに、しばしば思い違いをすることがあるのではないかね?ちょうど子供が、習いたての知識をひけらかして、親に間違いを指摘されるように?」

若者「それは往々にしてあるでしょう。」

老師「それに対して、同じ事柄についても先の者より深く確かな知識を備えた者は、全体を上から眺めるようにして、あらゆる側面から考えを巡らすことができるのではないかね?ちょうど親が、自分が経験してきた人生というものを、子供の将来を考えるための材料とするように?」

若者「それも確かなことです。」

老師「それでは、政治家が仕事をしっかり果たしているかどうか、君自信が確かに判断できると思うかね?君よりも政治に関する知識に長けた政治家を、乏しい知識しか持たない君が批評するというのは、非常に困難であり、また適切ではないのではないかね?それはあたかも、子供のためを思ってなされる親の世話を、子供がその意味を理解できずに、ぎゃあぎゃあ喚き立てるようなものではないかね?」

若者「言われてみればそうかもしれません。」

老師「では先程君は、政治家が政治の仕事をしっかりと果たしていれば、当の政治家がどんなに休もうが無駄話をしようが文句を言わない、ということに同意したのだが、そもそもそれがしっかりと果たされているかどうかは、君には判断できないものだ、と結論付けられるのではないだろうか?」

若者「悔しいですが、話の流れからするとそうなるようです。」

老師「さて、まだ話はこれから続くところなのだが、そろそろ君も帰らなくてはならない時間ではないかね?」

若者「おっと危ない!昨日もぎりぎり滑り込みセーフといったところでしたからね。それでは今日はこの辺で失礼します。それにしても結論に行き着くまでに、まだしばらくかかりそうですね。」

老師「年寄りとの対話を望んでおいて、早く結論を出したいだなんて、それは無理な話だよ。私には時間があり余っているのだからね。急ぐ必要なんてないのだよ。」

若者「それもそうですね。それではまた明日、ここでお会いしましょう。」

老師「そうだね。私が忘れていなければの話だがね。それでは。」