思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

ポーチの女の子

丸太の腰掛けに家族三人が座ろうとしている。父と子ども二人である。小さい方の男の子が、勢いよく丸太に腰を落として背中から転げ落ちる。少し頭を打ったようである。後ろで座っている中年女性が、ああ、と言って心配そうな顔をする。男の子は泣き出そうとする。父は、よしよし、痛くないもんな、痛くないもんな、と言いながら男の子の頭を撫でている。男の子は、ふぃー、と声を押し殺しながら、父の腕の中で涙をこらえている。

男の子が泣きそうになっているところに、その子のお姉ちゃんであろう女の子が駆け寄る。女の子は肩にかけたポーチからハンカチを取り出し、父に向けて差し出す。女の子の顔は笑顔である。父は弟の頭を抱えてやるばかりで、お姉ちゃんのハンカチには気づかない。やがて男の子の痛みは和らぎ、父と一緒に立ち上がる。女の子も立ち上がる。女の子はいそいそとハンカチをポーチに戻しながら、父の手を取って一緒に歩いていく。