思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

葦の就活

何でもよいので、あなた自身を何かに例えてください。

はい、私は葦のような人間だと思います。

どうして葦なんでしょうか。

はい、踏みつけられても折れることなく、どんなことにも耐えていける人間だと思うからです。

それについて具体的なエピソードはありますか。

はい、わたしは子供たちと遊ぶボランティアサークルを一回生の時に立ち上げて、部長をしていました。最初は部員がわたし一人でした。構内にチラシを貼っても誰も興味を持ってくれませんでした。これではダメだと思い、講義の合間などに大学でみんなから見える場所でPR活動をすることにしました。

どんなPRを。

はい、ボランティア活動をしている自分と、その自分と一緒に遊んでいる子どもを一人二役で演じるというようなことをしていました。よく知らない人の前で演技をし続けることは精神的に辛く、気持ち悪いと言って馬鹿にして笑う人もたくさんいましたが、それでもめげずに毎日続けました。三カ月くらい経つと、ようやく一人の新入部員が入部してくれました。あの時は本当に嬉しかったです。その子は今でも親友です。そして3年経った今では、部員数は50名を超えるまでになりました。へこたれずに続けた結果だと思っています。

なるほどありがとうございます。それでは、あなたの挫折経験を教えていただけますか。

はい、これは先ほどお話ししたボランティアサークルでの一人二役に関することなのですが、この演技をするにあたって私は挫折を経験しました。

具体的にお願いします。

はい、何でも突き詰めてやりたい私は、PR活動を始めるにあたり近くの演劇教室に通い始めました。そこで怒る練習と泣く練習をしました。演劇未経験の私なりに頑張ってみたんですが、自分の力だけで怒ったり泣いたりすることにどうしても抵抗があり、先生からもダメだダメだと言われ続けてへこんでいました。そんな頃、同じ大学で当時付き合っていた彼氏に自分の演技を見てもらったところ、気持ち悪がられ、最終的には彼の方からフェードアウトする形で自然消滅してしまいました。振られたんだと気づいた私は、本当にやり場のない怒りがこみ上げてきて、一人で部屋で暴れまわりました。何でもかんでも壊してやりたいと思いました。それから一晩中ずっと泣き続けました。止まらない涙というものをその時始めて体験しました。もう立ち直れないと思いました。しかし、夜が明けて朝になると、昨日の自分の怒りや涙を思い出し、そうか、本当に怒ったり泣いたりするというのはああいうことなんだ、と感じられ、その時大事な何かを体得したように思えました。そこには再び立ち上がる自分がいました。それから本当の演技ができるようになったんです。長くなってすみません、とにかく演技が原因で失恋して立ち直れないくらいに挫折したんですが、そこから大きなものを得て成長できたということなんです。

なるほど。あなたは先ほど、ご自身が葦のようにしなやかな人間だとおっしゃいました。踏みつけられても折れることはないと。

はい、折れません。

ところがあなたはご自分が挫折した経験を話されました。葦のようなあなたはそもそも挫折することがないと私は思ったのですが。私にはあなたが挫折する人間なのか、しない人間なのかがわからなかったですし、葦のような方なのかどうかもわかりませんでした。最終的に私はこの面接であなたという人物を把握することができませんでした。今後のご活躍をお祈りいたします。今日はどうもありがとうございました。

はい、ありがとうございました。