私的名画③ グリムショー「Evening Glow」
自分のための備忘録として、好きな絵に対する思いを残しておこう。
本日掲載するのは、グリムショーによる「Evening Glow」である。
一人の女性が並木道を歩いている。
題名から察するに、時間帯はおそらく夕暮れ時だろう。
辺り一面が夕日に満たされ、遠い先まで優しい光に包まれている。
女性は夕日の射す方に顔を向け、この風景を心地よく一人占めして楽しんでいるように見える。
学生の頃、こんな風景の中を何度も歩いた記憶がある。この絵ほどに夕日が射し込んでいたわけではないけれど、ちょうど西日が斜めに射してくる時間帯が多かった。
ちょうどこの絵のように道の両側に並木があり、秋には落ち葉が道一杯に敷かれていた。すぐ横を川が流れており、その川を散歩する時によく通った道だった。
私にとって夕方になりかかる時間は、一日の終わりへの少しセンチメンタルな気分と、夕飯への期待感が混ざり合って、とてもお気に入りの時間だった。
一人歩く私の横を何人かが談笑しながらすれ違っていくけれど、その声も妙に風景にマッチしていて、むしろ風景の一部を成しているようで、とても自然なものに感じられて心地よかった。
目に見えるものも耳に聞こえるものも、すべてが風景として完成されて、歩いているのは自分一人だと思えた。
この絵の中で一人歩く女性も、周りのすべてが妙にマッチしている心地よさを感じているような気がする。
この絵の前に立つと、私はいつでも昔の風景の中に戻っていくことができる。
もうあの日々に帰ることはできないけれど、あの日々の自分を思い出すことができる。