私的名画④ ブリューゲル「バベルの塔」
自分のための備忘録として、好きな絵に対する思いを残しておこう。
非常に有名な絵で、多くの人はこの絵を見れば「バベルの塔」だと判別できる。
今年は国内でバベル展が開かれ、大いに賑わっていた。いまさらこの絵に関する客観的な説明など不要だろう。
個人的なお気に入りポイントは3点ほどある。
一つは、小さな人間たちがそれぞれの仕事に精を出している姿を見ることができる点である。
塔の建設に忙しくする人々、港での荷運びをする人々、農作業をする人々など、画面に顔を近づけてじっくり見てみると、実に多くの人々の姿が描かれていることに気づかされる。
その姿のどれもが躍動感を持っており、本当にそこで仕事をしている人々を遠くから眺めているような気分になる。
どっしりと動かない塔の周りに、無数の人間がひしめいているのがかわいらしいと感じる。
第二に、塔の内部が見えない点もお気に入りである。
非常に広大な外観が描かれているけれど、その内部構造がはっきりしない。
上部に建築段階の塔の姿が少し露出しているが、それも極一部に過ぎず、結局は想像に頼るしかない。
中には庭園があって、街のようなものがあるのだろうか?そしてその中で実際に人々が生活しているのだろうか?
はっきり示されていない点が素晴らしいと感じるし、この絵が長く愛される大きな理由のようにも思える。
見えない部分があるからこそ、いつまでもそれに惹きつけられる。
そして第三に、この塔が未完成である、という点である。
建設中のこの塔は、すでに雲の高さを越えている。
これから先、この塔はどれほどの高さになるのだろう?比率から考えると、まだまだ高くなりそうな気がする。
あまりにも高くし過ぎたことにより、聖書では神により倒壊させられるけれども、この絵を見ていると本当に神々のいる世界にまで到達しそうな気がしてくる。
すでに過去の塔であるはずなのに、これから先はどうなるのだろうかとわくわくさせてくれる。
未完成であるからこそ、この絵は完成されているのだと思う。
この絵はいつも新鮮な発見をもたらしてくれる。
自分もまだまだ建設途中の人間だからこそ、余計にこの絵に惹かれるのかもしれない。