思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

死者の呼び声

お前は何をもたついてるんだ?

早くこっちに来いよ。

こっちは極楽だぜ。

そっちみたいにあくせく働く必要なんてねえ。

腹が減って辛い思いをすることもねえ。

食っても食っても腹がいっぱいになることもねえ。

つまり常時食い放題ってわけだ。

 

 

俺もそっちに居た頃は、こっちに来るのが随分怖かったさ。

何でも初めてのことってのは、やる前はちょっとびびっちまうだろ?

でも今までを思い返してみろよ。

やってみたら案外簡単に出来たってこと、多くなかったか?

そりゃずっとやり続けるってのは難しいさ。

だけどよ、これはたった一回きりなんだぜ?

もしお前が二度と経験したくない苦しみだったとしても、安心しろ。

この苦しみは一回きりだ。

その後は極楽が待ってるんだ。

 

 

こっちに来た奴らはみんな言ってるぜ。

何でもっと早くこっちに来なかったんだろう、てな。

俺もほんとにそう思うぞ。

こっちに来ればただで食い放題だってのに、お前は何のためにしんどい思いをしながら食うために毎日働いてるんだ?

そんなことは賢い奴のすることじゃねえ。

もっと合理的に行動するんだ。

 

 

たった一回きりのことだから、どこでやるか、どうやるかが大事だって考えてるか?

まあこっちにいる奴らもそれは結構考えたらしい。

一回きりの思い出は大事にしたいなんて、そっちにいる間はうだうだ考えちまうもんだよな。

でもよ、こっちにいる時間の方がはるかに長くなるんだ。

そっちに居た頃の思い出なんて、ほんの一瞬の出来事さ。

そっちにいる年寄りを見てみろよ。

昔はお前みたいにあれこれ思い出だの初めてだのとこだわってたかもしれんが、今やそんなことすっかり忘れちまってるだろ?

そんなもんなんだよ。

どうせ忘れちまうんだ。

 

 

そら、助けになりそうな道具ならそこらにたくさんあるぞ。

ちょっとその辺を歩けばいい場所もすぐ見つかる。 

やろうと思えば今すぐできるじゃねえか。

 

 

そっちにいる奴の声なんか聞くな。

勇気を持てよ。

俺はお前が来るのを楽しみに待ってるぞ。