思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

新郎による誓いの言葉

<神父>

「あなたは健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、この人と愛し合い、支え合い、共に生きていくことを誓いますか?」

 

<新郎>

(とうとうこの時がきたか。この問いに肯定の意思を示せば、俺はついに一国一城の主となる。しかし自由も失うんだ。前もって小遣い制のことを念押しされてるし、今までみたいに好きなことに金を使うことはできなくなるんだ。かわいかった元カノの写真ともお別れだな。さらば美しき独身時代よ。それにしても、この神父さんも結構大事な質問をさりげなくしてくるよな。これは多分人生で一番重大な質問だぞ。よく考えてから答えよう。健やかなる時か。まさに今この瞬間って感じかな。俺も自慢じゃないけど割りと腹筋も割れてるし、こいつのスタイルもモデル並みに抜群だしな。しかも顔が最高にかわいい。もちろん愛し合えるに決まってるさ。病める時ねえ。今の俺はぴんぴんしてるけど、仕事も結構忙しいし、そのうちいきなり倒れたりするのかな。まあ女の平均寿命の方がずっと長いし、俺の方が先に死ぬだろ。しかもこいつが病気になったなんて話は聞いたことがないし。つまり、俺は別に病める時も死にそうな時も普段どおりの生活をして、こいつの世話になっとけばいいってことだな。余裕で愛し合えるね。富める時って金を持ってる時か。わざわざ言われなくても、金を持ってたらみんな愛し合えるっての。愛情のない奴らも金のためなら愛し合えるって話だし。もちろん俺たちは純粋に愛し合ってるんだけどさ。まあ俺はサラリーマンの平均年収しかないから平凡な生活だけど、こいつもずっと働きたいって言ってるし、金のことは安泰かな。ってことは貧しい時なんてないから問題ないな。もしうちの会社が倒産して無職になっても、こいつの仕事は食いっぱぐれないもんだし、まあ支え合って生きていけるさ。それにしてもこんな土壇場でこんな質問をしてくるなんて、神父さんも度胸あるよなあ。もし俺がここで「いいえ」なんて言ったらどうするつもりなんだろ?そんなことしたらこいつも親も気を失うだろうな。でも神父さんも結構おじいさんだし、これまでの式でそんなカップルも一つくらいはあったのかもなあ。まあさすがに俺もTPOってものをわきまえてるし、ウケ狙いでそんなあほなことはしないけどな。うん、こうやって考えてみるとやっぱり俺たち愛し合ってるし、これからも愛し合えるに決まってる。俺の決断に間違いはない。よーしいくぜ、俺の人生最大の肯定の言葉!)

「はい、誓います。」