思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

ピンクのチラシ

マンションなどの集合住宅のポストの脇にはゴミ箱が置かれていることが多い。日々頼みもしないのに勝手に入れられる不要なチラシはこちらにどうぞ、というわけである。 

捨てられるチラシは大体いつも決まっていて、住宅販売のチラシやピザ屋のチラシ、ネット通信契約のチラシなどが多い。誰もが真面目に見向きもせず、見慣れた色合いを確認しただけでゴミ箱に突っ込んでしまう。

 

時々ポストの中に、ピンクのチラシが入れられていることがある。文字通りピンク色というわけでもないが、いわゆる大人向けのチラシである。

このチラシが入っている時にポスト脇のゴミ箱を確認すると、いつもと違った光景が見られる。

普段ならば大量に同じチラシが積もるように捨てられているのに、このピンクのチラシに限ってはそうではない。明らかに普段のチラシよりも、捨てられている数が少ないのである。

 

独身男性ならば持ち帰って後でじっくり見ようという算段だろうか。 そして友達や彼女が来る前に、跡形も残さずに処分してしまうのだろうか。

妻子のいる男性ならば、持ち帰る難易度がかなり高くなる。家族の目を盗んで、ここぞというタイミングでチラと見て、その後は他のチラシに紛らせて一緒に捨てる計画だろうか。それとも、なんのチラシか確認せずに他のチラシとまとめて持って帰ってしまった風を演出して、「何だこのチラシは!」とでも言いながらチラ見して捨てるのだろうか。

 

ポストを開けてピンクのチラシを確認した時、もしその場に同じマンションの住民が居合わせた場合はどうするだろうか。

鉢合わせたのが女性だった場合、「私はこんな不埒なものを見る変態ではありませんぞ!」とでも言わんばかりに、勢いよくゴミ箱に突っ込んでその場を後にするだろうか。

変わって相手が男性だった場合、即座に無言の紳士協定を結び、お互いに何のチラシかもわからない風を装ってとりあえずポストから取り出し、軽く会釈でも交わしながらそれぞれの部屋に向かうだろうか。

 

どうもピンクのチラシというものは、男性の悲しいサガに訴えることのできる、罪深くも微笑ましい差し入れのようである。