思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

私的名画② トマス・コール『人生の航路 青年期』

自分のための備忘録として、好きな絵に対する思いを残しておこう。

 

本日掲載するのは、トマス・コールによる『人生の航路 青年期』である。

 

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綺麗な風景の中に、一人の青年と天使、そして遠くに幻想的で抽象的な城のようなものが見える。

 

青年の後ろで手を差し伸べているのは天使だろうか。

「さあ、満足するまで行きなさい」と言っているような気がする。

そんな天使の存在には気づかず、青年は空に手を伸ばし、少しでも蜃気楼の城に近づこうとする。

 

頼りない小船に乗りながら、荷物など持たずに身一つで旅に出る青年。

この青年は、あの蜃気楼には永遠にたどり着けないかもしれない。

遠くの山の頂よりもさらに高いその城は、青年の力では手に負えないものに見える。

しかし青年は、誰が引きとめようともこの蜃気楼への旅をやめることは決してないだろう。

若者の、青年の蜃気楼に対する情熱は、誰にも引きとめることはできない。

この青年は手にオールなど持ってはいないが、それでも小船は先へと進む。

彼の情熱が燃えている限り、この小船はずっと先へと進み続けるのだろう。

 

この絵を見るたびに、自分の蜃気楼を思い描く。

果たしてこの蜃気楼は、決してつかまえることができないものなのだろうか?

それとも、ひたすら歩けばそこに在るものなのだろうか?

期待と不安感に胸をざわつかせていることに気づくと、まだ旅を続けられている自分を発見して、少し安心する。