思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

2018-01-01から1年間の記事一覧

強風と少年

とても風の強い日のことです。ある心優しい少年が一人で街を歩いていました。 歩道の脇には、強風に倒された自転車が沢山地べたに寝そべっていました。周りには沢山の人が歩いていたのですが、誰一人として自転車を起こそうとはしません。少年は不思議に思い…

女たちのバレンタイン

明美の働く部署は、男性2人に女性3人の、合計5人で構成されている。その女性のうちの1人が、ここでは係長を務めている。もう1人の女性は、明美より2年先輩の、智子である。そして明美は、去年の春に入社したばかりの新入社員である。 2月14日のことである。…

老師との対話「種蒔き③」

若者 はい、まだあります。抜け落ちていた第二の点は、その種が蒔かれる土地の種類への言及です。 先程は種の種類について触れましたが、それら多種多様な種と同様に、種を受け取る土地もまた多種多様であるということです。 一口に土地と言いましても、それ…

老師との対話「種蒔き②」

老師 どんな重大な点を見落としていただろう? 若者 それを取り上げる前に確認しておきたいのですが、種蒔き人によって蒔かれる種というのは、まさしく教育者が施す知恵のようなものと考えて間違いないでしょうか? 老師 もちろん私もそのように考えているよ…

老師との対話「種蒔き①」

老師 おはよう。こんな朝早くに呼び起こして申し訳ないと思っているんだが、取り急ぎどうしても君の意見を聞きたくなったのだ。今すぐでなければ、私の考えが頭からするりと逃げ出してしまいそうなのだ。 若者 おはようございます。珍しいこともあるものです…

老師との対話「砂つぶ」

若者 老師さま、私には悩みがあるのです。 老師 何でも話してくれたまえ。年寄りの一番の楽しみは、若い人の話し相手になることなのだから。 若者 ありがとうございます。最近特に思うことがあるのです。それは、私は結局何者にもなれないのではないか、とい…

マンホール

よく雨が降った日の翌日のホームルームで、太郎の在籍する3年2組の担任教師である南は、いつも生徒に見せる和やかな笑顔を浮かべながら全員に向かって話した。 「昨日はすごい大雨でした。土砂降りで洪水のような日は、マンホールが開いてしまうこともありま…

初詣

年が明けて頭に浮かぶ共通の大行事としては、初詣がまず挙げられる。日頃は信心深くない大多数の日本人も、この時期は皆で示し合わせたかのように神を信じるか、信じているような気になる。 よしんば全く神を信じていなくとも、初詣という行為自体に意味を見…