思考のかけら

日々頭に浮かんだことを、徒然に雑然と書いていきます。

すれ違い方

前方からやってきた人とすれ違うとき、お互いに進路をずらそうとすることにより、図らずも相手の進路を妨害してしまうことがある。
妨害時にはお互いに体を左に一振り、右に一振りして、合わせ鏡のように同じ動作をする。
この動作をすることで思わぬ友情が芽生えたり、恋に発展するというような生産的な事件は発生しない。
妨害後の気まずいすれ違いざまに愛想笑いをしたり、ボソッと聞こえるか聞こえないか程度の声で謝ったりするものの、その後は何事もなかったかのようにそれぞれの日常を続ける。


私は人とのすれ違い方がとても下手で、相手の便利を考えて進路を譲ったはずなのに、結果としては相手の時間と体力を無駄にしてしまうことが多かった。
これには私の生来の優柔不断さが大いに関係していると思われるが、それでも最近はすれ違い方が以前よりは上手くなったと感じている。

 

その秘訣は以下の2点である。
①「自分の進路を譲らない」と決意し、まっすぐ自信を持って歩く。
②相手が「自分の進路を譲らない」と決意していることを察知し、自分の進路をずらす。

 

 

①の方法を選択する場合は、すれ違うよりも前に自分の決意を固めておく必要がある。
前方から来る相手に対し、「私はこの進路を決して譲りません」と意思表示することで、無言のうちに進路をずらすことを提案するのである。
「もしあなたがそのまままっすぐ進めば、進路を決して譲らない私と正面衝突してしまうことになり、お互いにとって良くないことが起きますが、それでもいいですか?」という気持ちを念により伝えるのである。
もし途中で自分の決意を折ってしまったら、残念ながらすれ違いに失敗し、例の合わせ鏡になってしまう。
譲らない決意を最後まで持ち続けた場合に、この方法は成功につながるのである。
優柔不断でやや弱気な私としては、この方法は少し難易度が高い。
しかし今後も試行回数を増やしていけば、徐々に慣れていくとは思う。

 

②の方法は、私としては①よりも難易度が低い。
これは相手をよく観察し、その決意を汲み取ればよいので、弱気な人間にも精神的な負担はほとんどない。
「あなたの固い決意から、その道をまっすぐ進まれるものと判断しました。私はあなたとの正面衝突は望みません。ここは固い決意を持ったあなたの進路を尊重し、私が横に少しずれることより、衝突を回避しましょう。」
この方法を選択する場合は、遠くからしばらく相手を観察している必要がある。
相手が固い決意の持ち主であるかどうかを見抜き、その持ち主であればこの②の方法を選択するのである。
注意しなければならないことは、一旦この方法を採用したならば、途中で「よく見るとそれほど決意を持っているとは感じない。ここはやはり私が決意を強くし、まっすぐ行くべきか」などと考えてはならないということである。
そんなことをすると、また例の哀れな合わせ鏡となってしまう。
相手の決意を最後まで信頼しなければ、この方法は成功しない。

 

 

結局のところ、①と②のいずれを選択するかの基準は、「相手の決意」にある。
相手が「自分の進路を譲らない」との決意を漲らせている場合には、②の方法を選択する。
一方、相手からその決意を感じ取れない場合には、自分が①の方法により、「自分の進路を譲らない」決意を見せる必要がある。
自分と相手の双方が決意を持っていない場合に、すれ違いは失敗するのである。

 

状況によって上記の2つの方法を使い分けることで、すれ違い方は上達するはずである。
現状の私は②の方法は比較的容易に行えるので、当面は①の方法により、自分の決意をあらわにする訓練が必要だと考えている。