私がここに来てから、たくさんの季節が過ぎて行きました。
今私が座っている席は、私が初めてここに来た時にあなたが座っていた席です。
これまでたくさんの人が出入りして、その度に少しずつ席も替わっていきましたね。
季節も巡って、ついにあなたの出て行かれる時が来たのですね。
時間が経つのは本当に早いものです。
白髪が少し増えたのではないですか。頰の皺も少し深くなったのではありませんか。
あなたも私も自分では気づかないうちに、少しずつ老けていくのですね。
思えば私たちは、同じ時間を同じ場所で過ごしてきたのですね。
そう思うと長年の親友のようではありませんか?私にはそう思えます。
明日にはあなたはこの場所から出て行ってしまう。
寂しいです。
今日は都合よく、私とあなた以外の人は休んでくれています。
最後に二人だけでゆったりと過ごそうではありませんか。
とは言っても、今更改めてお話することもありませんね。
顔を見合わせるのも恥ずかしいのでやめましょう。
窓の向こうを見てください。
いつもここから眺めていた景色です。
ちょうど夕暮れ時になって、辺りが夕日に優しく照らされています。
あなたはもうこの景色を見ることができなくなるのですね。
最後に目に焼き付けておきませんか。
出会った頃と比べて、私も少しは成長したでしょうか?大人になったでしょうか?
あなたには叱られてばかりでしたね。
私はあなたを親のように慕い、尊敬しておりました。
そんなあなたがいなくなるのは、とても心細いのです。
私は一人で歩いて行けるでしょうか?あなたから見てどうですか?
しんみりするのはやめましょう。
明日は笑顔でさよならしましょう。
私も笑顔であなたを送り出します。
長らくお世話になりました。
本当にありがとうございました。